知っとく健康コラム
プロバイオティクスってなんだろう? 2003/11/26
プロバイオティクスの定義
最近、「プロバイオティクス」という言葉をよく耳にしますね。量販店のヨーグルト売り場なんかを見てみると、この言葉があふれています。この「プロバイオティクス」という言葉、いったいどんな意味なんでしょう?
国際的には、「腸内フローラバランスを改善することにより動物に有益な効果をもたらす生菌添加物」、日本では、「腸管フローラを改善することによって、宿主に有益な作用をもたらす生きた微生物」と定義されています。
うーん、余計にわからなくなってきましたね。
それでは私、ひまわり太郎が、皆様にわかりやすくご説明いたしましょう。
風邪をひいたりした時にお医者さんが抗生物質を出してくれますよね。この、風邪のウィルスをやっつけたりする抗生物質のことを「アンチバイオティクス」と言います。この「抗生物質」と対比する言葉として、生物同士の共生を意味する「プロバイオシス」を語源として、生まれた言葉が「プロバイオティクス」です。いわば、「共生物質」ともいえる「善玉菌」のことです。
わかりやすく言いかえましょう。
「ヒトや動物の健康に役立つような優れた機能をもった、生きた微生物」が「プロバイオティクス」です。
微生物のことだったんですね。それでは、どんな微生物が「プロバイオティクス」なんでしょう?
もう少し詳しく「プロバイオティクス」の条件を見ていきましょう。一般的には、以下の7つの条件を満たす微生物が「プロバイオティクス」であると言われています。
- 安全である事
- 腸内細菌の仲間である事
- 胃酸・胆汁酸に対して耐性を持つ事
- 生きた細菌である事
- 人に対して有効であり腸管に付着する事
- 食品中に高い菌数を維持する事
- 安価である事
この条件を満たす微生物が、現在続々と見い出されはじめています。特に、乳用乳酸菌に、多くみつかっています。もちろん、すべての乳酸菌が、この7つの条件を満たす「プロバイオティクス」という訳ではありません。全体のなかではごく一部の乳酸菌と言えるでしょう。
しかし、乳酸菌は、昔から人類がはっ酵食品を通じて体内に入れて来た細菌群であり、経験的にみて安全性が高いことが保証されていることから、乳酸菌ほど「プロバイオティクス」としての可能性をもつ細菌群は他にないと言えます。
プロバイオティクスの食品ってどんなものがあるの?
それでは、「プロバイオティクス」食品には、どんなものがあるんでしょう?
先ほどお話しましたように、現在みつかっている「プロバイオティクス」の多くは乳酸菌に分類されています。乳酸菌がたくさん生きている食品には、ヨーグルトやチーズ、納豆、味噌、しょうゆなどがあります。こういった食品のなかで、「プロバイオティクス」の条件を満たす乳酸菌が続々とみつかっているのです。
プロバイオティクスとアレルギー
先ほどからの話で、「プロバイオティクス」が人の健康に役立つことは何となくおわかりいただけたと思いますが、実際にはどのように役立っているのかを見ていきましょう。
まず、アレルギーとの関係です。
現代人には、アレルギー疾患を持つ方がとても多いのは皆さんご存じの通りです。今、学会で定説になっているのは、「衛生状態が良くなったので、アレルギーが増加した」という考え方です。体内の複雑なメカニズムから解明されてきたことで、かなり難しい理論ですが、かなり乱暴に簡単に言えば、「衛生状態が良くなって身の回りから細菌が減り、細菌のバランスによって成り立っていた体内の様々なバランスが崩れてアレルギーを発症しやすくなった」ということです。
生まれて2年以内に抗生物質を使った子供は、使わなかった子供の40倍の確率でアレルギーになる、といった恐ろしい報告があります。抗生物質が、ヒトの消化管のなかで悪玉菌も善玉菌もひっくるめて殺しているのが原因だと考えられますね。そこで、消化管のなかでの細菌の「種類」と「数」がアレルギー発症の鍵を握っているのではないかと考えられるようになったのです。
このことに注目したフィンランドの研究グループが、乳酸菌を投与した子供と投与しなかった子供とで、アトピー性皮膚炎の発症率が2倍以上違うことを実証しました。
「アトピーや喘息、花粉症にヨーグルトが効く」と、言われているのはこういった実験結果が基本になっているんでしょう。
しかし、すべての乳酸菌が有用という訳ではありません。今、それを実証する研究が進められています。
プロバイオティクスの制ガン作用
「プロバイオティクス」は、ガンに対してどんなはたらきがあるんでしょうか?
ガンは、遺伝子の変異によっておこるものですよね。この「変異」をおさえるはたらきを、ちょっと難しい言葉ですが「抗変異原性」と言います。
最近の研究で、一部の乳酸菌に、非常に強い「抗変異原性」があることがわかってきました。ラクトバチルスNo.27などが、「抗変異原性」を強く持つと言われています。
また、「プロバイオティクス」は、ヒトの体内の免疫系(ガンの発症を食い止める仕組み)に働きかけ、ガンをやっつける細胞の活性を高めるはたらきがあることもわかってきました。
その他のはたらき
その他にも、プロバイオティクスは、便秘改善などの整腸機能や急性胃炎予防効果など、さまざまなはたらきが期待され、臨床的に広く利用されています。
「プロバイオティクス」は予防医学の旗手!
現在、抗生物質による治療の弊害として、抗生物質が効かない新たな耐性菌の出現という、とても深刻な問題がおこっています。MRSAなんかがその代表ですね。
そこで注目されているのが「プロバイオティクス」です。身体にやさしく安全であるのは間違いありません。「善玉菌」で「悪玉菌」をやっつけるという、大昔から人間が体内でおこなってきたことの延長ですので、とても安心できますよね。
「プロバイオティクス」は、環境やヒトにやさしい、予防医学、代替医療の旗手として、いま、注目を集めています。
HOME>知っとく健康コラム>表示コラム