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今日のにっこりひまわり 毎日健康社員日記

政治の役割〔4734〕2016/04/01

政治の役割

2016年4月1日(金)雨

久々の、雨。暖かい朝になりました。
今日はですね、珍しく(にっこり13年目にして初めてかも知れない)業界のことについて書きます。ご容赦くださいね。

昨日から、業界としては少し衝撃的な、そして一般の皆さんにとってはあまり興味のないニュースが、一部の関係者の間で駆け巡っております。写真は、日経新聞のホームページ
「生乳生産量の落ち込みに歯止めを 規制改革会議が提言」という見出し。

もう、この見出しの段階で、業界関係者の頭の中には”?”マークが駆け巡る。ああ。なんだこれは。

近年、生乳生産量の落ち込みにより、バター不足などが起きた、という「現象」が見えるのはご承知の通り。実は、我々中小乳業者にとっては、バターもそうですが脱脂粉乳不足が深刻でした。
これを、単に生産量の落ち込みだけを原因とするのは、大きな誤解。業界関係者なら誰でも知っていること。
生乳は、保存がきかない。そこで、余ると、脱脂粉乳やバターといった「特定乳製品」に加工する。特定乳製品は、低脂肪乳や乳飲料などに使われ、消費されるのだが、それが足りなくなった。飲用向けが優先されるので。で、どれくらい生産量が落ち込んだのか、と申しますと、全国的に見れば1%とか2%の世界。しかも需要は落ちていた。酪農乳業は、実は、そんな微妙な需給バランスで成り立っておるんですね。
なので、過去にも、生乳が余って廃棄した、などというニュースがあったり、足らなくなって乳製品が高騰した、てなこともありました。

1%や2%であれだけ乳製品が不足する。なので、日本では、そんな微妙なバランスの上に成り立つ需給をうまく調整するため、不足した場合に「国家貿易」を行うことになっています。WTOのカレントアクセスを前倒しして輸入したり、それでも足りなければ緊急輸入したり。
実は、余った時には業界全体がとんでもなく痛手を被るということで、どうしても、絶対余らない方向、つまり不足基調にバイアスがかかる。で、農水省が少しハンドリングを誤ると、今回のようなバター不足騒動になる、という訳だ。今回は、人災。
では、とんでもなく生乳が余剰になって困った、というのはいつのことか。2006年頃。ほんの10年前には、微妙な微妙な需給バランスが崩れて大変な余剰となり、大騒動になった。

つまり。
難しいんです。生乳の需給は。

バターが足りない!→どうやら生乳生産が落ち込みんでいるのが原因らしい→それは生産者が受け取る乳価が安いからにちがいない→その原因は、農協が生乳取引を独占硬直化させているところにあるにちがいない→生乳取引を自由化すれば、足りない時の乳価は上がって酪農家は万歳万歳。

さて。この図式、どうでしょうか。
まず、バター不足の原因に対する根本認識が間違っている。業界にちょっとでも関わった人間なら、誰でもわかること。
そして、そこからの論理展開、ロジックが意味不明。

何故、自由化すれば生乳生産量の落ち込みに歯止めがかかるのか。「流通の自由度を高めて酪農家の生産性向上や創意工夫が促されるから」だって。ああ。頭の中を見てみたい。

日経新聞の記事では、「国が指定した10の農協団体は地域ごとに生乳を集め、乳業メーカーに一括して販売している。生産者は農協団体に出荷しないと国から補助金をもらえないた め、生産量の95%以上が農協経由の取引だ。農協以外に出荷する酪農家は「アウトサイダー」と呼ばれ、補助金は受け取れない。」とある。
こんなこと書いたら、指定団体は、補助金のためにある独占団体だ、みたいに読めるではないか。指定団体は、確かに長年の制度疲労はあるかも知れないが、効率的で安定的な生乳流通にとって、大きな役割を果たしているのは事実。
で、日経は、それに続けて、「補助金制度を通じて生産量や用途を一元的に決めてきた指定団体制度は、酪農家の創意工夫を阻んでいるとの見方が強い。環太平洋経済連携協定(TPP)で海 外の安い乳製品が国内に入ってくるのを控え、付加価値の高い生乳をつくる酪農家を増やし、国内酪農を強化する。20年続く生乳生産量の減少傾向に歯止めを かける狙いもある。」とある。

牛乳の付加価値を必死になって考えてきた私からすれば、なんという安易なロジックだ。
偉けりゃ自分でやってみてみなさい!

それよりも。
少し冷静になって考えてみてもらいたい。
一番参考になるのはイギリスの例でしょうね。かつてイギリスでは、Milk Marketing Board(MMB)という、日本の指定団体に相当するような強い組織が、日本の指定団体と同じように一元集荷多元販売を行っていた。しかし、EUへの加盟から、解体を余儀なくされ、いろんな方策が取られながらも自由化に向かって邁進した。
その結果。
生産者乳価は大幅に下落することになった。取引も不安定なものになった。
紆余曲折を経て、現在は、酪農家と乳業メーカーとの相対取引、という、安定して穏健なものに落ち着きつつある、ということ。酪農乳業全体を見たら、自由化は、実に危険なことである、ということが判ってきた訳だ。

イギリスの生乳取引制度の変遷について、実に上手に調査し、まとめた、こんな論文があるので、ご興味のある方は是非是非読んでみて頂きたい。
この論文の一部を抜粋します。
「生乳取引も、生産量変動や需給変動に伴うコスト負担をいかに分担しあうことができるか、という問題の難しさゆえに、乳価形成を全く自由な取引に任せれば、取引交渉力が弱い生産者側に大きなコスト負担が降りかかることになりやすい。」
これを、規制改革会議の面々は、どう考えるのであろうか。

今、北海道を中心に、指定団体から外れて一部メーカー(安売り乳業メーカーがほとんど)に直接販売する「アウトサイダー」が増えている。政府や自民党にも、そう言った勢力からの圧力がかかりゆうがでしょうな。
生乳取引は、余乳処理まで全部ひっくるめて、生乳取引。アウトサイダーが今のように増えてから、まだ、日本は一度も生乳が余って困った状況になったことは、ない。しかし、あの、余って困って大問題になったのは、ほんの10年前なんですね。

メーカーは、生乳取引の安定が不可欠。そして、各地の生産者が、地方地方で安定した酪農経営を営み、地域に循環型の美しい風景をつくる。何より、地域地域の酪農経営が、営々と続けられることが重要である、ということを考える。

それが地方創生ではないのか?

こんな重要なことを素人が思いつきで決めていて良いのか?
できれば、規制改革会議のメンバーと議論してみたい。


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