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今日のにっこりひまわり 毎日健康社員日記

ある洋館にて〔6427〕2020/11/19

ある洋館にて

2020年11月19日(木)曇り

色褪せたコンクリートの石段を3段上がり、薄水色が鈍んだような色のペンキで塗られた両開きの玄関扉を開けると、沓脱の向こうには消毒薬の匂いを漂わせた、いかにも病院の玄関ホールのような、天井の高い空間が広がっていた。白い漆喰壁以外の部分は、よく磨き込まれた焦げ茶色の木材で統一されており、少し寒々しいガランとしたホールは、天井にぶら下げられた電球の、薄黄色の光で弱々しく照らされている。

 

ズック靴を脱いで大人用の大きなスリッパを履き、玄関左手にある大きな階段を上がる。一段上がるごとにギシ、と音がする階段で、大きなスリッパがパタパタと大きな音を立てた。階段を上がると、左右を大きな引き戸で挟まれた空間となっており、突き当たりが受付である。

左右の引き戸の上には、それぞれ「待合室」「診察室」と明朝体で書かれたプレートが掲げられ、その横には大きな歯の模型が幾種類も飾られていた。まだ10歳にも満たない僕にとっては、なんだかとても恐ろしいものだった。

受付で名前を言い、待合室側の大きな引き戸を開ける。引き戸の下にはローラーが付いており、滑るように開くのが、なんだか鉄道模型を走らせてるみたいで楽しい。

 

待合室に入ると、今までの寒さが嘘のように、暖かい空気が懐かしい匂いとともに充満していた。

壁際と部屋の真ん中に置かれた長椅子のクッションは、臙脂色をした天鵞絨の布で覆われていて、数人の大人が、静かに座っている。

部屋の真ん中には大きな火鉢。洋間用の、1mほどの高さがある鼠色の火鉢が、暖かさと、懐かしい匂いで、その部屋を満たしているのだった。

 

空いている長椅子にちょこんと座り、部屋の角の上にしつらえられた棚の上の白黒テレビを見上げる。テレビでは、3人ほどのスキーヤーが雪山にシュプールを描きながら滑降する映像が、軽快な音楽をバックに延々と流れ続けている。そう。当時のテレビは、番組が少なかったのか、そんな映像を延々と流す時間があった。

大正時代に建てられた洋館。昭和20年7月4日の高知大空襲でも焼けなかった洋館の2階。その待合室は、大正ロマンの雰囲気を感じさせる部屋。そこで、自分の名前が呼ばれるのを、「呼ばれなければいいのに」と思いながら過ごした日々。その部屋が好きだったこともあるが、虫歯の治療が怖かったから。

しかししばらくすると、入り口の引き戸が開き、白い制服に細身の身体を包んだ女性が顔を出して、僕の名前を容赦なく、呼ぶ。僕は重い気持ちでゆっくりと立ち上がり、金属音が心を抉る診察室へ、ノロノロと入ってくのであった。

 

文章って難しいっすね。やめたやめた。やめました。

半世紀前の風景。

今、織田歯科医院は、新しい最新鋭の設備を整えた歯医者さんになってるけど、旧館はそのまま残されています。薄水色の、旧間玄関扉のガラス越しに撮影して懐かしい風景を見たら、こんな文章を書きたくなってしまったのでした。ああ。


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