傑作たちに拝礼〔8245〕2025/11/11
2025年11月11日(火)晴れ!
今朝の高知新聞に、残念な訃報が。高知市在住のミステリ作家、西澤保彦さんが、肺がんで亡くなられました。まだ坂東眞砂子さんがご存命の頃、高知新聞社さんの計らいで、一緒に飲んだこと、あります。素晴らしい方でした。残念です。心よりご冥福をお祈りします。
僕とほぼ同世代で、安芸高校では吹奏楽部だったということもあって、とても親近感を抱いておりました。誰もが認めるそのお人柄は素晴らしくて、大好きな作家さんでした。
僕は西澤作品のほぼすべてを読んでいます。初期のタック&タカチシリーズとかは自宅に置いてあったりするのでひまわり文庫にはないけど、とにかく殆ど全部、読んでます。
西澤作品の魅力は、なんと申しましてもその複雑な設定と見事な論理展開。伏線だらけなので、最後まで読まないとなかなか全容がつかめない。それから、作風の幅広さも言うておかんといけません。
もちろん代表作は「七回死んだ男」で、かなり強引な設定ということでは「人格転移の殺人」なんかも同じようなジャンル。
タック&タカチシリーズは、いわゆる「安楽椅子探偵」モノではあるけど、結構シリアスなテーマ、人間の深層心理まで掘り下げるような展開があったりします。
神麻嗣子シリーズは、これまた設定がユニークで、軽いタッチでシリアスな心理を描く傑作。
近年では「腕貫探偵シリーズ」が人気で、これはもう、万人受けするミステリシリーズ。
シリーズものだけではありません。本当に幅の広い作風で、どこまでも楽しませてくれる西澤作品。
嬉しいのは、舞台設定に高知をモデルとした町、お店、大学などが登場すること。「カットレットハウス」は「コックドール」、とか。
西澤さん、数年前に奥様をご病気で亡くされました。下積み時代の西澤さんを経済的にも精神的にも支えてこられた奥様を亡くし、生きる活力を失ってお酒に溺れ、救急搬送されたそうです。その後、お酒を断って立ち直り、また名作の数々を世に出してこられた西澤さん。高知在住にこだわって作品を作り続けてこられた西澤さん、ちょっとはにかみながら、優しく楽しく会話してくれる西澤さんは、高知にとっての宝でした。また、改めて初期作品から読み返してみます。
今朝の高知新聞「小社会」は、こう締めくくられています。
懐かしい町で、先に他界した奥さんを思い、夜道の明かりに照らされて語る、温顔の西澤さんを思いだす。数々の「高知産品」を世に残し、わが町の天才が旅立った。傑作たちに拝礼。
