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元禄の御畳奉行は、悠々自適〔5510〕2018/05/17

元禄の御畳奉行は、悠々自適

2018年5月16日(水)晴れ!

こないだの日曜日、またまた実家でみつけた本。亡き父の蔵書の一つが、あまりにも僕のツボだったので持って帰って一気に読んだことでした。「元禄御畳奉行の日記」。これはすごいね。

 

元禄時代と言いますと、赤穂浪士の討ち入りがあったり、江戸文化が花開いたり、綱吉が生類憐れみの令を発布したり、近松門左衛門の心中ものが大ヒットしたりした、平和満喫の時代。百花繚乱。

戦国の世から100年が過ぎ、武士は、戦闘集団から行政役人に変化してサラリーマンになった時代と言うても良いでしょうな。

その時代、御三家筆頭の尾張藩の中級武士が、18歳から亡くなる前年の44歳まで、なんと8,863日の日記を書き綴ったのでありました。9,680日くらいの間の8863日。9割以上の日、書いてます。冊数にして37冊、文字数200万。

書いたのは、100石取りの中級藩士、朝日文左衛門さん。その日記は、跡取りがなくて朝日家がお取り潰しになった後、尾張藩の藩庫に保管秘匿され、なんと昭和40年代になるまで公開されることがなかったんだそう。内容が内容なんで、だと思う。その日記の名前は「鸚鵡籠中記」。

 

土佐藩にも、馬廻役の森広定さんが克明に記した日記があって、貴重な資料となっている。なっているけど、まあ、非公開にすべきような内容では、ない。

でも、最初から公開をまったく意図せず、「書く」ということ自体が好きで好きで堪らなかった文左衛門は、赤面するような内容も、誰かに知られたら大変なことになってしまうような内容も赤裸々に書き綴る。

その中には藩主やその取り巻きに対する批判もあり、ここには書けないないような内容の、藩主の母の行状についての克明な記事も、ある。

 

しかしまあ、元禄時代。

天下泰平。芝居などの文化が花開く。大都市が発展する。庶民が様々な分野で活躍する。でも、歪みも増えて、貧しい庶民も増加し、治安が悪化する。そんな時代。

これ読むと、武士、仕事してません。勤務はとんでもなく楽チンで、暇を持て余す中級武士。非生産階級がこんなにたくさん居て、国が成り立っているというのがすごいよね。

 

文左衛門は、暇にあかせて弓術の槍術のと、武芸百般道場に入門しまくる。でも、どれも、そんなに続かない。酒と女と芝居と釣りが大好きで、その話が毎日の日記に登場。尾張藩内では規則で観られないはずの芝居を、毎日毎日、悪友と連れ立って観にいく。酒を飲む。

でも、とんでもない恐妻家で、その話も赤裸々すぎるほどに書かれている。

好奇心も旺盛で、特に「心中」についてはマニアと言っても良い文左衛門。あちこちで行われた心中について、詳細にレポートしている文左衛門。

京・大坂に2ヶ月の公務出張を3回してるけど、ほとんど仕事の話は出てこない。毎日毎晩、業者の接待で飲んで遊んで浮かれて飲んで。この時代の中級役人、すごい。これで世の中が成り立っているのが、何よりすごい。

 

この中公新書の本は、そんな膨大な日記のエッセンスを読みやすくまとめてくれてます。

こりゃあ、こんな日記、マル秘になるはず。でも、江戸時代の風景をこれほど解りやすく示してくれている日記も、ない。

僕のにっこりひまわりなんぞ、当然公開が前提なので、文左衛門のようなことは書けませんきに。彼は知らなかっただろうけど、彼は、この日記を書くためにこの世に生まれてきた人なのかも知れません。

 

栞がわりに挟まれていたのは、全日空、東京高知便の搭乗券。だと思う。昭和61年2月発行の第22版がこの本なので、その年のことだと思う。まだ、高知空港がジェット化されて2年。

父が飛行場の売店で買い求め、飛行機で読んだのかどうなのか。

読書の趣向がまったく同じなのが、なんか、嬉しい。


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