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今日のにっこりひまわり 毎日健康社員日記

生乳需給について〔7071〕2022/08/25

生乳需給について

2022年8月25日(木)晴れ!

昨夜はしなね様。志那祢様。土佐神社のお祭り。「志那祢様では雨が降る」のは土佐人にとって常識で、昨夜も降りました。少しだけやけど。今朝も少し降ったけど、今はお日様が輝いてます。よさこいが済み、志那祢様が終わり、秋は着実に近づいているけど、今日も暑くなりそう。善き哉善き哉。暑いと牛乳売れるしね。そんな訳で、久々に僕らの業界のこと、少し書きます。長いですよ。長文注意。長いです。

 

昨年の年末年始とか、春休みとか、生乳が余って廃棄乳が出るかも知れない、みたいな報道がありました。幾度か書いてきたように、生乳の需給というのは本当にデリケートで、需要が数%下がったり生産がほんの数%伸びたりするだけで、かなり大きな騒ぎになります。そもそも生乳が日持ちしないことに、その原因がある訳やけど、他にも業界独特のいろんな要因が複雑に絡み合います。それを詳しく書くととんでもない文字数になるので朝から書かんけど、簡単には理解できないほど複雑なのは、事実。

それもこれも、需給をうまく調整しながら業界を発展させよう、という意図でできあがってきた仕組みなんですね。

そう。相手は「乳牛」という生き物。生乳の日持ちがしないことが、需給調整が難しい一番大きな要因であることは間違いないけど、あと、相手が生き物であることも、大きい。余ったからといってすぐに生産量を落とすことは不可能だし、足らないから生産量をすぐに増やすのも、無理。蛇口を開けてから出てくる量が増えるまで、数年かかるし、逆もまたしかり。

余剰乳は脱脂粉乳やバターといった長期保存が可能な乳製品に加工することで、需給調整を行います。脱脂粉乳やバターは、需給調整の結果できてきたもの、という側面が、僕ら業界の者にとっては大きいのであります。で、そんな状況を更に複雑にするのが国際関係。

自動車などの日本の工業製品を有利に輸出できるようにするのと引き換えに、農産物の輸入については、かなりのノルマが課せられています。乳製品もそう。「カレントアクセス」の名の下に、国内でいくら余っていても、現在のように国際需給が逼迫して価格が上がっていても、輸入しないといけない仕組み。余っているのに輸入する。

ここまで読んだだけで、「複雑だ」ということだけはおわかり頂けたのではないでしょうか。実はそこに、更に、需給調整のことを考慮していない系統外の自主流通の生乳というものが存在したりして、状況を更に更に複雑にしている訳やけど、その話はまたいずれ。

 

まあ、こういった状況やけど、ご承知の通り国際的な穀物相場の暴騰があり、エネルギーコストも暴騰する中、酪農家経営は大変なことになっています。一般の生乳取引は、年に一度の乳価交渉で決められ、固定されるから。しかも、この春には乳価、上がらなかった。それは、牛乳が余っていて乳製品在庫が過剰になっている状況で、乳製品在庫を抱える大手乳業を中心に、抵抗したから。

しかしもうどうにもならない、という状況になり、やっと、11月に乳価があがることになりました。期中改定は、初めてのこと。

 

なんで乳価値上げを大手乳業が嫌がるかというと、過剰乳製品を抱え込んでしまうから。なんで乳製品が過剰になっているかというと、一昨年くらいから生乳が余ってきているから。ここからが本題。

なんで生乳が余っているのかというと、この数年、国によって酪農の増頭対策などの増産政策が、補助金などを中心に積極的に行われ、その効果が出始めたところに、コロナ。そして去年の冷夏で牛乳消費が落ち込んだから。需給が劇的に緩んだ、という訳だ。

なんで国が増産に向けて補助金などを投入したか。皆さんは数年前、店頭からバターが消えるという状況を覚えておられると思います。需給が逼迫し、飲用乳を優先した結果、余剰でつくられるバターや脱脂粉乳が不足して混乱しました。ニュースでも大きく取り上げられ、そのニュースを受けて議員が騒ぎ、議員に言われた役人が、増産政策を立案して実施した訳だ。まあ、それだけではないけど、それが大きな要因だったのは、誰がなんと言おうと事実。

 

あの頃、僕らメーカーにとってはバター不足よりも脱脂粉乳不足が深刻でした。在庫が逼迫しているということで、価格も高騰(ちなみに現在、脱脂粉乳は余っているのに価格は下がらんねー。不思議。)。高騰だけならいいけど、モノがない。当時農水省にそのことを申し上げると、「計算上は国内在庫はある」との返事で、緊急輸入などに踏み切らない。「ある」と言われてもないものはない訳で(どこかが値上がりを見込んで抱え込んでいたという噂もあるけど)、結局、多くの乳業メーカーは、低脂肪乳などに国産脱脂粉乳を使用するのをやめて、輸入のホエーパウダーなどの乳製品を使うようになりました。だって、「ない」から。その際、僕は、農水省に言いました。「こうやって乳製品不足の状況を放置したら、メーカーは原料を置き換えてしまう。それは商品の「原材料表示」を変更することになるから、将来、脱脂粉乳が余っても、表示を変えてしまっているので再び脱脂粉乳を使うことにはならない。その時余ったからなんとかしてくれと言うても知らんよ。」

現在の状況は、僕の予言がある程度当たったことを示していると思う。僕も業界長いですきんね。

 

で、その業界が長い僕が今、予言できることがあります。

現在の酪農経営は、飼料価格の暴騰などで本当に大変。一番苦しんでいるのは、このところの増産政策に乗って大きな投資をした酪農家さんと言われてますね。だけど、生乳、乳製品が余っているからと、乳価の引き上げを渋る大手乳業。

酪農家さんは、国の政策に乗っただけで罪はない。でも、厳しい。大手は乳価の値上げを抑え込み、減産しろと大声を上げる。

この状況を放置するとどうなるか。

何年後かに、必ず、生乳が足りなくなります。まずは飲用向けが優先されるので、真っ先に影響を受けるのは、バター。店頭からバターが消えたとき、その原因はどこにあるのか、その「犯人」は誰なのかを明らかにする為、その証拠として、今日はこんなに長い文章を書いてしまいました。大切なのは、タイムラグを認識して、目の前の状況にあわてることなく、将来を見据えること。酪農経営と、乳製品在庫を切り分けて考えること。目の前の余剰乳は、それを起因した国が、その責任において処理すること。

 

写真は、北海道内で発行されている「財界さっぽろ」という雑誌の記事コピー。さすが北海道の雑誌だけあって、複雑な生乳取引、需給のことを、比較的正確に書いています。まあ、日経新聞とかに比較しての比較的ではあるけど。

こうやって、この業界が複雑であること、酪農家さんが大変であること、目の前のことや自分のことしか考えていない業界関係者がいることなどをご理解いただき、11月からの乳価改定に伴う値上げに、何卒ご理解を頂きたいと願う気持ちから、ダラダラと書き殴ってしまいました。いつもは20分で仕上げるにっこりひまわりですが、今日は40分もかかってしまった。

ご理解のほど、何卒何卒よろしくお願い申しあげます!


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