芸術とは何か、を、贋作から考える〔8156〕2025/08/14

2025年8月14日(木)晴れ
また、夏の暑さがギラギラと戻ってきました。ところが。今朝は、クマゼミの声は遠くから聞こえるばかりで、本社棟の周囲からは聞こえなくなりました。よさこい過ぎると、違うねー。
さて今朝の高知新聞。8月15日を明日に控え、戦争、平和関連の記事が多いですね。あれから80年。キチンと向き合わんといけません。
そんな記事に挟まれて、「贋作絵画 来月13日公開」という見出し。おう。これは観にいかなくちゃ。
僕は、「高知県文化芸術振興ビジョン」の評価委員をやってて、その委員会の中で、この高知県立美術館が摑まされた贋作について、少しだけ意見を述べさせて頂きました。
1996年に1800万円で購入した、ドイツの画家、カンペンドンク作とされた「少女と白鳥」が贋作であると判断されたのは今年の春のこと。実際に描いたのは、ベルトラッキという現代画家でした。
贋作問題は、人類が昔から抱えて来た問題。僕も、「山田太郎 オトナの教養講座」というYou Tubeチャンネルで詳しく知りました。一番有名なのは「メーヘレン事件」でしょう。贋作なのに、ナチスを騙したことで英雄にもなったメーヘレンの事件。
日本が絡んだ贋作事件では、「オットー・ヴァッカー事件」があります。1935年、大原美術館がゴッホの贋作を購入してしまったもの。この動画で、この贋作に感動したのがきっかけでゴッホ研究に進んだ先生が「作品は偽物だけど俺の感動は本物だった」とおっしゃってるのが、贋作問題の奥深さを示しています。
あと、この「ルグロ事件」も日本が騙された事件で、これはもう国際的詐欺事件。
日本人贋作家では、「滝川太郎事件」が有名。戦後間もない日本で起きた、規模の大きい贋作事件。
まあ、こんな感じで、贋作事件てのは昔からある訳だ。
これ見てて感じるのは、「美術って何?」「芸術ってなんだろう?」という本質的な疑問。近年、有名絵画の価格が高騰してたり、バンクシーの絵がとんでもない価格になったりしてます。いったい、絵画の価値ってなんだろう、と思うよね。それを、贋作問題を絡めて考えると、少しだけ美術の本質が見えて来たりするんではないだろうか、そんな事を思った訳です。
そんな意味で、今回高知県立美術館が摑まされたという贋作を展示し、今一度、美術とは何か、といったテーマで考えてみるののいいんではないか、という意見を、評価委員会の中でも述べさせて頂いたんですね。
もちろん、美術作品を自分で作成したり、関わったりされている方々にすれば、贋作なんぞはとんでもない。贋作展が集客力があるから、と言うて、安易な展示はやめて欲しい、という意見もありました。それも当然のご意見。
この下部に、同じくベルトラックが描いた贋作を購入してしまった徳島県立近代美術館の記事があります。この美術館では、5月ー6月にその贋作を無料公開。「あくまで詐欺事件について報告する場」ということで、展示室を使わずに誰でも見られる1階のスペースで見せたとのこと。関係者の矜持やねー。
今回の事件で、高知県立美術館の学芸員さんは、「許せない犯罪」と改めて強調、「美術館としては贋作は避けなければいけなかったが、来館者に考える機会を提供するのが役割、最先端の科学調査も知ってもらえれば」と語ってて、まさにその通りだと思いました。そしてもう一歩、芸術とは何か、美術とは何か、を考える場にもなったらいいよね。
「当のベルトラッキ氏は本紙のメール取材に『真作と鑑定した専門家たちは、この絵を傑作だとみなした。今もその卓越性は失われていない』と主張した。」
のは言語道断やけど、このコメントについても、考察する機会にしたいねー。