活断層とは〔8076〕2025/05/26

2025年5月26日(月)薄曇り
今朝の高知新聞。久々に、尾池先生の「常夜灯」が掲載されてました。表題は「活断層とは」。シンプルかつ、深いテーマやねー。
毎度書いておりますように、尾池先生は、僕の高校の大先輩であり、京都大学元総長の地震学者。今日のコラムにも書いておりますように、日本列島の上に住む我々は「変動帯の文化」を生み出した人類だ、と説いておられます。今回のも、とても興味深く面白いコラムでした。
まず重要なのが「日本の文字による資料の中で2回活動したことが確認できる活断層帯は1930年の北伊豆地震を起こした丹那断層だけである」という指摘。活断層がずれて大地震を引き起こす地質学的時間は、僕ら人類の過ごした時間よりもずっと長いスパンである訳だ。そんな中、有史以来2度の地震があったという丹那断層帯。
一度目は841年。「続日本後紀」に記録のある大地震で、二度目が、このにっこりでも幾度か書いてきた昭和5年の北伊豆地震。丹那トンネルの掘削中、この断層破砕帯に突き当たり、丹那盆地の大量の水が抜けることになりました。尾池先生は、その掘削の影響が地震の発生を早めた可能性について言及されておられます。そして、そんな見地から、南アルプスの断層帯を貫通するリニア中央新幹線に警鐘を鳴らしておられるのも、尾池先生。
通常なら、人類の文字歴史上に2度も起きるようなスパンでは発生しないのが、活断層による大地震。
そういうことで、今回のコラムには、「怖いのは長期間動いていない活断層」と書かれています。日本の中心部、近畿北部で醸成された文化、文明は、断層によってできた「隆起山地から侵食で土砂が堆積して地下水を含」んでいるこの地域に人が集まり、都市が生まれたことによって育まれた、と説きます。だから「変動帯の文化」。そしてその断層帯は、長い間、動いていない。つまり、いつ、大地震が発生してもおかしくない訳だ。
ただ、尾池先生はこうも書きます。「大地が強く揺れるのは十数秒である。その時にけがしないようにすれば普段は活断層による恩恵を受けて暮らせる。」
大自然の恵みと脅威は表裏一体であることを忘れず、慎重に、備えを怠らず、驕らず、しかし楽しく暮らしていくことを、尾池先生は説いておられるんだと思います。活断層とは、そういうものだ、と。